溝口敦:ノンフィクション作家。暴力団について取材・執筆を長年行っているらしい。
要約
暴力団対策法で指定されたものを「指定暴力団」と呼ぶ。これが22団体。暴力団は、ピラミッドが何層にも重なった構造をしている。五次団体まである暴力団もある。山口組(神戸)、稲川会(東京)、住吉会(東京)を警察庁は特に重視している。
山口組は全暴力団の構成員数の半分弱をしめる。本家には六人の舎弟、80人の若衆がいる。舎弟とは組長の弟、若衆はこどもという位置づけである。かれらは直系組長。若衆の中で長男にあたるのが若頭。直系組長たちは、毎月100万弱の会費を本部におさめる。これはじぶんたちが活動できるのが「代紋」のおかげと考えるからである。さらに積立金を30万、日用品の購入を50万以上おこなっている。さらに、なかまの直系組長が引退するときには100万積む。ただ、直系組長たちも、二次団体の組員から月々20−30万ずつ月会費を集めている。出世には二つ道があり、ひとつは暴力団同士の抗争で名をあげること、もうひとつは金をたくさん上納することである。対立相手の組員を殺傷し、逮捕され、無事刑期を終えて出所したときによい待遇を受けられる。が、これも貧乏な組では無理なのだ。
シノギ(資金獲得活動)には覚醒剤、恐喝、賭博、ノミ行為などがある。覚醒剤は表向きには禁止されているが、儲かるので上層部も見て見ぬ振りをしているようだ。末端価格は、原産地の出荷価格の150倍なのである。野球賭博の胴元をやってたこともある。賭博の胴元は、もめたときに警察に届ける訳にもいかないので「強く、資金力があり、金の貸し借りにきちんとした信用がある」暴力団しかできなかったのである。闇カジノというのもある。はやる店なら一晩一億の金が動き、5%が入る。キャバクラやクラブのホステスを使って客を連れ込ませるのである。みかじめ料というのもある。暴力団排除条例で払ったほうも罰せられるようになったので、ビルのオーナーがとりたてて上納する、などしている。解体や産廃処理でももうける。
暴力団は中卒や高卒が多い。暴走族あがりというのもかつては多かった。組に入れば、部屋住みになる。こづかいはもらえるが、とてもやっていけないので、兄貴分のシノギについていく。そうして組長から親子の盃をかわすまでになる。これは省略されることも多いらしい。博徒系はテキ屋系に比べて儀式がちゃんとしていないらしい。正式な組員になれば、組長に金を差し出すことになる。刺青は掘らなければならないわけではない。が、入れる人は入れる、そしてC型肝炎になるのである。組を抜けるのは大変で、指詰めを迫られることもあるし、お金を積まなければいけなかったりする。
警察とは仲良くやってきた。暴力団対策法は、警察のためにつくったともいわれている。だが、暴力団は警察との関係を断とうとしており、失敗に終わった?事件が起きたとき、上は捕まえないから下手人をだせ、というような交渉が行われる。芸能はもとより暴力団とのつながりが強い。場内整理に便利だし、チケットを売りさばいて赤字を防ぐなどにも使える。ただ政治的な影響力はあまりもっていないようだ。暴力団がなくならないのは、警察における暴力団対策の部署をなくしたくないからだ。
この本について
とくにコメントすることはない。雑多な知識が詰め込まれた読み物であって、分析ではないからだ。いってみれば新聞記事の寄せ集めのようなもので、読んで一通り暴力団のことをわかったような気がするだけのものである。
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